「本心」平野啓一郎 著

 

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Pixabay

 

 

以前、『私とは何か「個人」から

「分人」へ』 という本を読んで、

この著者のことがずっと気になって

いました。

 

そして、先月やっとAmazonで

著者の作品をチェックしてみることに。

 

いくつかあらすじを読んでみた中で

 

”急逝した母を、AI/VR技術で

再生させた青年が経験する魂の遍歴。”

 

この一文を読んで、これだ!と思い、

早速ポチり。

 

「本心」平野啓一郎 著

 

生きている限り、人は変化し続け、

今のこの瞬間の僕は、次の瞬間には

もう、存在していないのだから。

実際には、たったこれだけのことを

言う間にも、僕は同じでない。

 

冒頭、もうこの文章だけで、

買った価値はあったと思うほど

仏教に興味を持つ私は、

ぐい〜っと本の中に引き込まれ

てしまいました。

 

仏教と言ってしまいましたが、

この本は仏教とは関係ありません。

 

けどね、哲学的要素たっぷりの

内容でとても面白い本でした。

 

 

 

主人公 朔也  29歳

 

格差社会が顕著となった2040年

の日本。この時代では「自由死」

が認められていた。そして、

先行きを不安に感じたのか?

主人公、朔也の母親は、まだ

70歳にもかかわらず、この

「自由死」を希望する。

 

母の気持ちが理解できない朔也。

 

 

そんな中、母親は、「自由死」では

なく、事故死で亡くなってしまった。

 

なぜ、母親は、「自由死」を望んだ

のか?本心を知りたいと思った朔也は、

VF(バーチャル・フィギュア)という

仮想空間で母親そっくりのAIの制作を

依頼するところから物語が始まる。

 

 

この物語でも危惧されているけど、

日本の若者たちは、この先、

どうやって暮らして行くのか?

その上、我々バブル世代が

後期高齢者になる頃には、

日本の人口が激減すると

言われていて、今以上に

介護問題がひどいことになりそう。

 

設定は未来で、SF小説の

ようですが、ものすごく

現実味のあるお話になっています。

 

<若干ネタバレ>

 

お話の後半、母親と関わりのある

人物が登場し、朔也の出生の秘密が

明かされる。

 

 

結婚というより、子供が欲しかったんです。

四十代に差し掛かって、焦る気持ちで

苦しんでいた時に、震災を経験して、

直接被災したわけじゃなかったけど、

やはり、死生観を揺さぶられたんでしょう。

 

 

 

自分が寂しいという理由で、

子供を作る決心をした朔也の母親

に対して、共感できるけど、

少しだけけしからんという

気持ちが湧きました。

 

なぜかというと私は、小松左京の

「日本沈没」という作品をテレビで

見て以来、「死」を恐れるように

なりました。

結婚して、子供が欲しいと思った時、

その子供も私と同じように「死」の

恐怖と戦わなければならないことに

気づき、ひどく落ち込んで、

子供を作る意味ってなんだろうと

考えたことがあるから。

 

 

話は逸れますが、

先日、プールで歩いていたら、

輪廻の世界から抜け出す方法は

全人類が子供を作らなければ

いいのでは?という突拍子も

ないことを思いついてしまいました。

 

生まれてくる子供がいなければ、

2度と生まれ変わる

必要ないじゃん!!って。

 

 

すいませんm。

 

妄想がすぎますね。

 

 

冗談はさておき、「自由死」を

希望した母親ですが、私は無理です。

 

死ぬ直前、病気ならいざ知らず、

「自由死」となれば、脳も体も

健康なわけでしょ?

 

ということで、私がそれを希望した

場合を想像してみる。

 

大切な家族に見守られ、

今私は旅立とうとしている・・・・

 

「あ!そうそう銀行の通帳は

戸棚の奥だからね。」

 

「あ!それと・・・」

 

色々伝えたいことが浮かんできて

死ねないという・・

 

それに私は親しい人や家族に囲まれて

一人死んでいくなんて、無理。

 

やっぱり、理想はうっかり死んじゃった

というパターンがベストだとこの本を

読んでいて思った。

 

それにしても朔也が三好さんと一緒に

暮らし始めて、<母>との会話の

必要性が薄れていく様子は、

なぜかホッとした。

 

きっと、朔也の本当の母親も

あの世で安堵していることだろうと

思った。