コンビニ人間 村田沙耶香 著

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本屋に行くと必ず店頭に並んで

いた人気の本をなんと図書館で

借りることができた。

よく見たら芥川賞受賞作品

じゃないですか。知らんかった。

どうりで読み始めたら、

めちゃくちゃ面白い。

あっという間に読んじゃった。

 

今日の本は、

「コンビニ人間」村田沙耶香 著

 

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ごく普通の家庭に

生まれた主人公の恵子。

ところが家族の中で恵子だけが

普通じゃなかった。

 

自分のどこが普通じゃないのか

全く理解できない恵子だったが、

大人になり、コンビニでアルバイトを

するようになると、マニュアル通り

仕事をこなせば普通の人間を演じる

ことができることに気がつく。

 

 

でも何が普通?

何が当たり前?

 

そんなことを考えさせてくれる一冊。

 

p26

今の「私」を形成しているのは

ほとんど私のそばにいる人たちだ。

三割は泉さん、三割は菅原さん、

二割は店長、残りは半年前に辞めた

佐々木さんや一年前までリーダーだった

岡崎くんのような、過去のほかの人たち

から吸収したもので構成されている。

 

これこれ。

占いで、本当の自分って?

というのがよくテーマになるけど、

結局のところ本当の自分なんて

存在してなくて、今まで関わってきた

多くの人たちとの交わりの中で身につけた

「私」なのだ。

 

 

p63

自分が働いているのに、その職業を

差別している人も、ちらほらいる。

 

何かを見下している人は、特に目の形が

面白くなる。そこに、反論に対する怯えや

警戒、もしくは、反発してくるなら受けて

たってやるぞという好戦的な光が宿っている

場合もあれば、無意識に見下しているときは、

優越感の混ざった恍惚とした快楽でできた

液体に目玉が浸り、膜が張っている場合もある。

 

これは、恵子の働くコンビニに

入った白羽さんという男性の

ことを言っているのだけど、

最近私の職場に入ってきた

アルバイトの女性がまさにこのタイプ。

自分の職場をそして上司に対する

見下し方が半端ない。

 

「脳なし、役立たず、使えない」

「こんなやり方してたら

こんな会社潰れますね」

と、長年働く同僚たちに

向かって息巻く。

 

まだ入社して間もないのに

どうしてそこまで言い切れるのか?

その自信たるやどこから来るん

だろう。

この本に登場する白羽さんの

言葉一つ一つが彼女とかぶった。

 

 

p67

コンビニは強制的に正常化される

場所だから、あなたなんて、

すぐに修復されてしまいますよ。

 

 

これ、コンビニだけじゃないよね。

この世界全体がこの仕組みで成り立って

いると、この文章を読んでいて思った。

 

それと、

P77

正常な世界はとても強引だから、

異物は静かに削除される。

まっとうでない人間は処理されていく。

 

 

はて、正常とはなんだろう。

所詮誰かしらの影響を受け、

多数派がそれを正しいと

思い込んでしまっただけであり、

多数派がまっとうということには

ならないのだけど、悲しいかな

数で負けちゃうんだよね。

 

 

主人公の恵子が、最後に言い切ったセリフ

 

気がついたんです。私は人間である以上に

コンビニ店員なんです。人間としていびつでも

たとえ食べて行けなくてのたれ死んでも、

そのことから逃れられないんです。

私の細胞全部が、コンビニのために

存在しているんです。

 

 

1万時間以上費やせば、誰でも

その道のスペシャリストになれると

いわれるが、18年間コンビニで

働き続けたことで、自分である以上に

コンビニ店員ということなら、

 

あのキムタクも自分である以上に

キムタクなのかもしれない。

私の友人は、キムタクって、カッコつけてる

よねと言うが、彼は、コンビニ人間ならぬ

アイドル人間ではないだろうか。

何十年もトップアイドルとして君臨した

彼は、カメラが向けられれば当たり前

のように細胞全てがキムタクになって、

ファンのために存在している。

 

私は?母親を25年、妻を30年やって

いるのだから、自分以上に妻であり母親

として、旦那や息子のために存在している

のかもしれない。