「生の短さについて」セネカ 著
哲学や、宗教を学ぶように
なってから、自己啓発本
と呼ばれる類の本を読んで、
気がついたことがある。
それは、新しいことは
それほどないということ。
誰もが口を揃えて古典を
読みなさいと言う理由は、
ここにある。
今、本屋に並ぶ自己啓発本の類は、
過去に書かれた内容を現代風に焼き
直したものが多い。
今日紹介する本は、BC1〜65年
ローマ帝国、政治家、ストア派哲学者の
ルキウス・アンナエウス・セネカの
「生の短さについて」
この本は、内館牧子さんの
「すぐ死ぬんだから」を購入後
Amazonさんが薦めてきた本です。
タイトルを見て速攻ポチりました。
人々がどれほど長寿を切望するか、
見てみるとよい。
老いさらばえた老人が
わずか数年の延命さえ願かけを
して乞い求める。
自分は歳よりも若いと偽り、
虚妄の年齢で自己満足し、同時に
運命をも欺いているかのような
喜びようで自己欺瞞を続けるのである。
しかし、やがて何かの病患や
衰弱で自分が死すべき人間で
あることを思い知らされたとき、
まるで、この世から出て行くのではなく、
生からむりやり引き離されでも
するかのように、どれほど
怯えながら末期を迎えることであろう。
彼らは何度も何度もこう叫ぶ、
「自分は本当に生きることを
しなかった愚かな人間だった。
この病状から逃れられたら、
閑居してのんびり暮らそう」と。
まさに数年前に癌を疑われた時の
私だ。
これに反し、あらゆる世間的な
営みから遠く離れて生きる人の生が
豊満でないなどということがありえ
ようか。
その生は一片たりとも他人に
譲渡されることはなく、一片たりとも
あちこちにばらまかれることもなく、
一片たりとも運命に委ねられることもなく、
一片たりとも怠慢によって失われることもなく、
一片たりとも椀飯ぶるまいで減ることもなく、
一片たりとも余分なものもないのである。
その生の全体が、いわば見返りを生む(1)。
したがって、どれほど短かろうとも、
十分すぎるほど十分なのであり、
それゆえにこそ、最期の日を迎えると、
賢者らしく、しっかりした足取りで、
ためらうことなく死出の旅路につくのである。
まるで仙人思想のようですわね。
すべての人間の中で唯一、
英知(哲学)のために時間を
使う人だけが閑暇の人であり、
(真に)生きている人なのである。
周りの目を気にして、
自分のやりたいことが
できなかったり、他人に
依存してばかりいる場合、
それは自分の人生とは
言えない。
例えば、他人から見れば、
それは単に自分の時間を
切り売りしているだけの仕事だと
しても、自分が誇りを持って(
哲学を持って)仕事をするので
あれば、それは精神的には、
“世間的な営みから遠く離れて
生きる人の生“になる。
要するに世間的価値観と
自分の価値観を切り離し、
自分の哲学をもって生きる
ことが大切なのだと思う。
そして、ゼノン、ピュタゴラス、
デモクリトス、アリストテレス
などの哲学者は、自分のもとを
訪れた者をより幸福にし、より
自己を愛する人間にして送り出し
てくれる。
また、死ぬ術を教えてくれるだろう。
彼らは皆、あなたの生涯の歳月を
無駄に潰させはしないとセネカは言う。
今更だけど、本はすごいよね。
何千年の時を経て、本を開けば
彼らは、悩める私たちを
待っていてくれる。
また、いつでもおいでね〜と。
本の最後に書かれた
痛烈な皮肉。
他人のあら探しをし、
誰彼かまわず臆断している
暇など、君たちにあるのか。
『なぜこの哲学者は人より
広壮な屋敷に住んでいるのだ。
なぜこの哲学者は人より贅沢な
食事をするのだ』などと。
めちゃくちゃかっこいい。
さらにこちら
自分は満身潰瘍だらけなのに、
他人の面皰が目について
仕方がないのか。さながら、
自分は醜い疥癬を患っていながら、
他人の実に美しい身体にある
黒子や疣をあざ笑っているかの
ごとくだ。金を求めたといって
プラトーンをなじるがよい。
およそ人間の世界は、君たちが
口舌をせっせと働かせて自分より
優れた人々を誹謗中傷していられる
ほどの暇を君たちに残しておいて
やれる状況にはない。
例えが痛快すぎて、
笑ってしまった。
古代の人も現代となんら
変わりないことにめっちゃ
親近感が湧きました。
どんなに科学が進化して、
世の中が便利になっても
人生の短さを痛感しない
かぎり、人間は、何も変わら
ないんだなとおもった。
余談ですが、床屋で何時間も
居座って過ごす人に対して
皮肉っている文がある。
一本一本の髪の毛を
どうするかで(床屋と)
合議したり、ざんばら髪を
直してもらったり、
薄くなった髪をあちこちから
集めて額に撫でつけたり
している者たちのことである。
当時も薄くなった髪の毛を
あちこちから集めていた人が
いたことに驚いたのでした。
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