「逆ソクラテス」伊坂幸太郎 著

　　　　　　　

先日、スーパーの

レジに並んでいると目の前に

会計を済ませた女性が、娘と

思われる少女（たぶん高校生）に

袋詰めをさせていました。

ところが、その少女の

やり方が気に入らないらしく、

周りが驚くほどの大声で

少女を怒鳴り続けていました。

小さな子供を感情的に叱る

母親なら、よく見かけるけど、

反抗期を迎えていても

おかしくない少女を

ここまで抑え込み、

従わせている母親を見たのは

初めてだったので、正直驚いた。

そして、その母親は、少女に

何か言葉を吐き捨て、

先に店を出て行ってしまった。

その後、少女は、その体には、

不釣り合いなほど大きな買い物

バックを背負い、母親の後を

追いかけていくのを見て、

なんとも言えない気分になった。

前置きが、長くなりましたが、

今日紹介する本は、

　　　

「逆ソクラテス」　伊坂幸太郎　著

最近、少しずつだけど、

以前より小説が面白く

読めるようになってきたので、

昨年読んだ「グラスホッパー」、

「終末のフールー」に続き、

伊坂幸太郎さんの本に

再チャレンジ。

なぜ私がこの本を選んだかというと、

単に伊坂さんの本のランキングで

上位にあったから。

5つの短編小説。

登場人物はほぼ小学生。

この頃は、大人や先生の

言うことが正解であり全て。

そして、クラスの人気者や、

優等生の言うことが正義だ。

そして、彼らが持つ先入観は、

周りに伝染する。

もし担任の先生が、自分の

持つ先入観で子供たちを

見ていたら？

クラス全員にその先入観が伝染する。

けれど、１話「逆ソクラテス」では、

草壁くんが先生に向かって、キッパリと

「僕は、そうは、思いません」

と言ってのける。👏ブラボ〜

ミニバスのコーチが、

指示通りに動けなかった

三津桜に腹を立て、怒鳴る場面。

三津桜の母親が、コーチに決め台詞！

「コーチ、うちの三津桜、

そんな風に怒鳴られても

全然響かないんですよ。」

〜略〜

「あ、でもコーチがほら、

イライラを発散させたいとか、

感情を抑えきれないで怒鳴りたい

だけでしたら、ぜんぜん構わない

ですからね」

この本のタイトルになっている

ソクラテスは、「不知の自覚」を

唱えた哲学者。

その逆ということは、

自分が無知だということに

気づかず、指導する先生や

傲慢な生徒のこと。

なので、読んでいると、

腹のたつ場面がいくつも

ありますが、先程の三津桜の

母親の言葉のように、

彼らをギャフンと言わせて

くれるので、読んでいて痛快です。

なので、この本を読み終えると、

この逆ソクラテスの人々を

退治した気分を味わえます。

著者の言いたいこととは

関係ないけど、このスッキリ感は、

ニーチェの言うルサンチマンなの

でしょうか。

でも、私は彼らを批難できない。

なぜなら、彼らは不知を

自覚していないだけだから。

この本を読んで、スッキリ

している私も、思い込みが

激しいし、ミニバスのコーチの

ように息子を叱ったこともある。

いじめられたことはあるけど、

きっとそれと同じぐらい私も

人を傷つけたと思う。

だから、それに気づけただけでも

ラッキーだとこの本を読んで思った。

そして、スーパーで出会った

お母さんもお嬢さんもいつかそれに

気付いてくれることを願うばかり。

p224

『バスケの世界では、残り一分を

何というか知ってるか？』って。

〜略〜

永遠、永遠だ。

〜略〜

そうだよ、永遠。

バスケの最後の一分が

永遠なんだから、俺たちの

人生の残りは、あんたのだって、

余裕で永遠だよ。

そして、ラストの家電量販店の

店員の涙。

p203

犯人を、「あんな異常者」と

決めつけるようなことを

言った際に、「その子だって、

いろいろあったのかもしれない」

と、磯憲が穏やかに口にしたのだ。

〜略〜

「俺は性善説どころか、人間のこと

なんて、信じてないんだよ。

自分自身がいい人間じゃないん

だから。だからこそ、だよ」

〜略〜

『あいつは死刑だ！市中引き回し

の上、打首獄門！』と言える人の

ほうが夢想家じゃないかな。

現実的じゃないんだから」

「だったら、どうすればいいわけ」

〜略〜

「おまえたちが答えを見つけたら、

教えてくれよ」

自分で考えなきゃね。

私にもまだ残り１分がある！！

よっしゃ〜