「そうか、もう君はいないのか」城山三郎 著

     

 

「そうか、もう君はいないのか」

         城山三郎 著

 

     

 

 

 

 

この本を選んだ理由

 

先日、図書館で借りた池上彰さんの

「考える力がつく本」に

城山三郎さんのことが書かれて

いて、興味を持ったので、図書館で

借りてきました。

 

本当は、「少しだけ、無理して生きる」

という本を読むつもりでいたのだけど、

隣に置かれていた「そうか、もう君は

いないのか」という題名の方に

心が動いたので、今日はこの本を

紹介したいと思います。

 

著者 城山三郎

1927-2007年、日本の小説家で、

経済小説の開拓者。

「少しだけ、無理して生きる」に

「論語と算盤」で有名な渋沢栄一に

ついて書かれているんだけど、とても

わかりやすくて、面白かった。

 

調べてみると、渋沢栄一の伝記も

書いていたんですね。そりゃ

詳しいはずだわ。

 

彼の小説は、高度成長時代の

官僚や、銀行、大企業で繰り広げら

れる人間模様が多く描かれています。

 

今後、読んでみたいと思った本

 

- 官僚たちの夏

- 小説日本銀行

- 毎日が日曜日

 

 

 

内容 

 

著者と妻の出会いから別れまでの手記。

 

 

 

感動、印象に残ったところ

 

p109

 

結婚して三十年ほどが経って、また二人きり

になった。正確には、二人暮らしは初めてで

あった。親の責任を果たした解放感もあれば、

子育てが終わった虚しさもあり、家の広さに

どこか落ち着かない感じがする。体の重心を

失いかねない心持ちがした。

 

 

人生の一区切りがあって、夫婦二人になるという

気分は、良くも悪くも、独特なもの。しかし、

いつか二人きりでいることにも慣れてしまえる

が、やがて永遠の別れがやってくる。

 

今回、夫婦でコロナに感染し、仕事に行かない

旦那と二人で過ごす2週間。なんとも不思議な

感じがした。

 

著者は、動物が好きなこともあり、

奥様がお弁当を作り、二人で動物園に

行く場面は、静かな時間が流れている

ことが伝わってきて、とても素敵だった。

 

私も動物が大好きなので、

今度動物園に行ってみようと思った。

でも、旦那と一緒に行きたいとは

思わなかった。

 

考えてみれば、旦那と二人でどこかに

行くことって、子供が生まれてから

ほとんどない気がする。

五年後、旦那が65歳で退職し、

ずっと家にいることになったら、

二人でどこかに行くだろうか。

 

多分、行かないと思う。笑

 

永遠の別れがやってくるその日まで、

きっと私たち夫婦は、スポーツクラブに

行って、いい汗かいたねと言いながら、

発泡酒か第3のビールで乾杯し、

毎日が終わる気がする。

 

 

p136

 

息子は何日か病院に通いつめ、

今日はニューヨークへ戻るという朝。

きっと息子も、これが別れの挨拶に

なると感じながら、孫の話などをし、

やがて来る出発の時間に。

息子と、そこまで見送ろうとした私が

病室を出ようとした瞬間、容子が明るい、

大きな声で呼び止めた。

 

 

次の瞬間、容子は息子に向かって、

直立して挙手の礼。

息子は驚きながらも、容子に向かい、

直立して挙手の礼を返す。

私はひさしぶりに笑い声を上げた。

もちろん、容子も息子も笑顔。

3人が笑っての最後の別れになった。

 

 

この場面、涙が止まらなかった。

いつか訪れるであろう

自分と息子の別れを想像し、

何度読んでもうるうるする。

 

息子だけでなく、旦那も、そして私の両親、

姑、友人。喧嘩をしたり、不満があっても

必ずその日が来る。

 

私はこの容子さんのように

明るく笑って、さよならが

言えるだろうか。

 

私としては、ぽっくり、突然、

やっちまった!的な最期が希望。

となると、お別れが言えないかも

しれないので、常日頃から、彼らとの

時間を大切にしたいと心から思った。