「終わった人」内館牧子 著

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前回紹介した

 

「海が走るエンドロール」を

 

購入した際、Amazonがこちらも

 

どうぞと勧めてきたのが、

 

今日、紹介する本。

 

 

「終わった人」内館牧子 著

 

主人公は東大卒、メガバンクで

 

トップ層には入れなかったものの、

 

エリートコースを歩んできた。

 

そんな彼にも、とうとう定年退職

 

というその日がやってくる。

 

そして、この物語が始まる。

 

実は、私の旦那が、この冬、

60歳定年を迎えます。

再雇用契約のある会社なので、

おそらくこのまま65歳まで

働くとは思うけど、本の書き出しに

「定年は生前葬だな」という

主人公の言葉が、ズキンと

心に刺ささり、物語にぐいぐいと

引き込まれて行きました。

 

うちの旦那は、若い頃には、

友人とバンドを組んで、仲間と

楽しんでいました。

しかし、中年を迎える頃には、

それぞれ仕事が忙しく、一人、

また一人と仲間が抜け、バンドは

解散してしまいました。

 

それからというもの

旦那の趣味といえば、ジムでの

運動と英語のお勉強のみ。

人生全てを仕事に捧げてきた

旦那が、これからどうしていくのか、

私はずっと心配でした。

 

なので、本屋に行くと、いつも

目立つ場所に置かれていたこの本を、

以前から読んでみたいと思っていました。

でも、これを読んだら

 

老人へまっしぐら〜

 

そんな気分になりそうだったので、

躊躇していました。

 

ところがこの本、Kindle Unlimitedに

なっていたんです。やったーーー!

今から心算しておかなきゃ。

 

なんとも現金な女でありますが、

読んで大正解。

老人へまっしぐらになるどころか、

元気が出ました。

 

 

定年退職をした主人公の壮の言葉。

 

明日から有り余る時間の中に

身を置かねばならない。

死ぬまでずっとだ。

どうすればいいのか、少なくとも

面白そうではなかった。

 

どこにも所属しないということが、

こんなにも寄る辺ないものとは

思わなかった。

 

どんなエリートだろうと、会社に

 

勤めている限り、肩書きが外れれば、

 

ただの人。そんな彼は、何か始めたら?

 

という妻の言葉で、近所のスポーツクラブに

 

通い始める。

 

この時の妻の気持ち、世の定年退職を

迎えられた夫を持つ奥様なら、めちゃ

めちゃ共感しちゃうのでは?

 

うちの旦那は、これまで育児はもちろん

家事ですら、いっさいしなかった

人なので、おそらく、これから家事を

手伝おうなんて微塵にも思っていない

だろうから、その日がきたら、私も

何か始めたら?と言ってしまいそうです。

 

 

スポーツクラブに入会すると決めた壮

 

でしたが、来ている人のほとんどが

 

ジジババばかり。

 

自分も彼らと大差ないのに、仲間に

 

入れば、一気に老け込むと思い込み、

 

彼らとは距離を置いていました。

 

ところが、このスポーツクラブで、ある

 

若者と出会い、人生が大きく変わります。

 

そして、彼が持っている長年の経験や

 

スキルがまた社会に役立つ日が訪れ、

 

定年を迎えたばかりのしょぼくれた

 

彼とは見違えるほど、変身を遂げるの

 

でした。

 

しかし、人生はそう甘くない。

 

あることがきっかけとなり、

 

定年前に貯めていたお金が

 

ほとんどなくなってしまいます。

 

それでも彼にはスキルがあり、

 

妻も美容師という資格が

 

あるので、卒婚という新しい

 

夫婦の形をとり、二人とも

 

細々と仕事を続け、最低限の

 

暮らしが確保でき、めでたし

 

めでたしとなるのでした。

 

 

まぁ、この辺りは、現実的ではない

よね。主人公のようにスキルや人脈を

持っている人間なんて、ごくわずか。

 

けど、この本に何度か出てきた

「成仏できない」という言葉。

 

還暦間近でありながら、まだ

成し遂げていないことがある

のなら、スキルや人脈なんかが

なくても、それに挑戦する

のも悪くないなとこの本を読んで

思いました。

 

だって、成仏したいじゃん。笑

 

 

私も還暦を迎え、友人知人は次々に

定年を迎えた。同時にクラス会や

昔のサークルのOB会や、数々の

会合が開かれるようになった。

〜略〜

それらの会でふと気づいたのである。

若い頃に秀才であろうとなかろうと、

美人であろうとなかろうと、一流企業

に勤務しようとしまいと、人間の

着地点って大差ないのね・・と。

〜略〜

ならば、何のためにガリ勉し、あがき、

上を目指したのか。もしも「最後は

横一列」と分かっていたなら、果たして

そう生きたか。

 

 

いやいや、上を目指した人にしか

得られた世界が、きっと広がって

いるはずだ。

 

人それぞれ、見える世界は違うけど、

私も今よりもっと!!の精神で

世界を広げていきたいと思いました。

 

この作品、映画になっていたんだね。

Amazonプライムビデオで観れない

ので、残念。