「恥」太宰治 著

今回も引き続き、太宰作品です。

f:id:uranairen:20210531155030p:plain

 1942年の「女性」という短編小説集

の一つ。

 

 

『恥』

 

〜登場人物〜

小説家・・戸田

友人・・菊子

主人公・・和子

 

〜あらすじ〜

主人公の和子は、小説家の

戸田へ手紙を書いた。

その手紙の主な内容は、ファンレター

では決してなく、戸田の書く小説の

問題点の指摘と、苦言を呈したもの

でした。

 

太宰本人も和子が書いたような

手紙をたくさんもらっていたのだろうか。

 

 

私は数年前まで、とあるアイドル

グループの熱狂的なファンだった

こともあり、こういった

思い込みの怖さをSNSなどで

見聞きしたことがあるので、

とても興味深く読むことが

できました。

 

役者さんが演じた役柄を

そのまま本気で受け取って

しまう視聴者がいると

聞いたことがあるけど、主人公

和子の場合、妄想がさらに

エスカレートしたもの。

 

ドラマの後に必ず、この

これはフィクションですと

テロップが入るけれど、こういう

タイプが一定数いるからだろう。

 

また、昨今のインフルエンサーや、

YouTuberなどへの中傷や罵倒なども

これと同じだと思った。

 

とはいえ、太宰の「人間失格」

を読んで、彼を人殺しと変わりないなどと、

過去の私は勝手に思い込んでいましたから、

和子と大差ないのかもしれません。

 

 

そう・・・

誰にだって多かれ

少なかれ思い込みはある。

 

だから怖い。

 

そして、何事もバランスが必要で、

こうして、読書を続けていく

ことが、他者の気持ちを理解する

一つの手段だと思った。

 

 

 

さて、前回に引き続き、

太宰治に関連する

私の思い出を

書いてみたいと思います。

 

それは、私が25歳の時のこと。

 

当時、同僚だった男性に

振られ、同じ職場に居づら

くなり、仕事を辞め、

一人、青森へ旅に

出ることにしました。

 

その時泊まった民宿が、

太宰治も泊まったことの

ある、竜飛岬の

奥谷旅館でした。

 

 

当時、旅館に予約を入れる

際、女性の一人旅と聞くと、

断られることが多かったのに、

この宿は快く受け入れて

くれました。

 

ところが、竜飛岬のバス停を

降りた瞬間、引き返そうかと

思うほど、寂れていて、

一人で来たことを後悔しました。

 

あの頃は、インターネットも

なく、情報といえば

旅行雑誌だけだったので、

行き当たりばったりの旅行は

スリル満点。

 

しかも、宿泊客は私だけ

だと思っていたら、男性が一人

いると言うじゃないですか!!

 

まぁ当然といえば当然なんだけど、

部屋の隔たりは、引戸一枚。

 

変なおじさんが夜な夜な

襲ってきたらどうしよう💧

 

などと、妄想が膨らみました。

 

そして、夕飯になり、

大きな部屋に通されました。

 

正直、自分の部屋に食事を

持って来てもらえると考えて

いたのですが、甘かった。

 

お善の前で正座していると、

真向かいに他のお客さんのお膳が

用意されているではないですか。

 

まさか、一緒に食べませんよね?

流石に時間はずらしますよね?

 

と、思っていたら!!!

 

パタパタとスリッパの音。

 

まさかっ!!

 

女将から案内されて、

もう一人の男性宿泊客が、

私の目の前に座りました。

 

 

マジですか?

 

どうしよう・・・・💦

 

 

気まずくなり、

俯いてしまいました。

 

でも、チラッとその男性を

見たら!

 

あらやだイケメン!!

 

しかも同世代。

 

ということで、お互い

照れながらもぽつりぽつりと

世間話をしながら、夕飯を

美味しくいただきました。

 

そして、彼が一人で、

北海道や東北を自転車で

旅行している真面目な

青年だということが

判明し、私のいやらしい

妄想は、終了しました。

 

そして、その夜は、この青年と

共に、お茶を飲みながら、

太宰や棟方志功のお話を

女将から色々教えてもらいました。

 

そして、翌日旅館を後にして、

弘前に向かうため、海沿いの

バス停で一人、バスを待っていると、

一緒に宿泊していた彼が、

見送りに来てくれました。

 

 

なんだこれ?

 

ドラマですか?

 

とはいえ、彼からは、連絡先を

聞かれることはなく、そのまま

となりました。

 

じゃんじゃん!!

 

さて、長くなってしまいましたが、

私は、太宰治と聞くと、懐かしくて、

このシーンを思いだすのでした。

 

昔、誰の作品か忘れましたが、

自分の死に際に思い出すのは、

身近な人ではなく、ほんの通り

すがりの人ではないだろうかと

書かれていたのですが、私も

その時が来たら、きっと

このシーンではないかと思うの

でした。